ピンクのバッタとの出会いと、その後のドラマ。すてきな発見は、保育・教育にどう生かされるか? あるがままの姿をたいせつに。
2023年8月30日、「ピンクのバッタ」について、赤穂西幼稚園さんから質問のメールをいただきました。
ピンク色って、びっくりしますよね。めずらしいのかな? なんでだろう? ふしぎがいっぱいです。
ふしぎなことに出会った園児さんと先生方、これをどう考えて、どんな取り組みに発展したのでしょうか。
ピンクのバッタに限らず、子どもたちの身近な発見を保育、教育にどう生かすか、他園の先生方にも参考になるんじゃないかな?
そう思いまして、その間のやりとりを、超リアルにご紹介したいと思います。
しつもんメールと、その後のやりとり
以下、ほぼそのままの、メールのやりとりです。クリックすると本文が出てきます。
2023年8月30日 赤穂西幼稚園→ひとはく
ピンクのバッタを捕まえました。最近増えているの? ピンク色の理由は?
八木先生
突然のメール、すみません。
兵庫県赤穂市立赤穗西幼稚園の宮島と申します。
昨年度同じく赤穂市の原幼稚園で、バッタゲッターを使っての研修にて、八木先生にお世話になりました。
本題です。
今日、園庭で園児がピンクのバッタを捕まえました。
テレビでもピンクのバッタ、と最近話題になっていたなぁという話になったのですが、
ピンクのバッタは増えているのでしょうか??
それからピンクなのにはなにか理由がありますか?
子ども達も私たち職員もとても興奮したのですが、誰に尋ねて良いのかわからず、
失礼と承知しながら先生にメールをさせていただいた次第です。
子ども達と「ふしぎだねぇ」で済ませるのではなく、なにか少しでも
子ども達の好奇心や心の琴線に触れることができる話ができれば、と思います。
お忙しいところ申し訳ありません。
何か先生からお知恵をいただくことができれば幸いです。
よろしく願いいたします。
赤穗西幼稚園 宮島由香
2023年8月31日 ひとはく→赤穂西幼稚園
ピンクの理由はよくわかりません。みんなで考えてみると楽しいのでは?
赤穂西幼稚園 宮島先生
八木@ひとはくです。
おたより、ありがとうございます。
いいものみつけたね!!
すてきです!!
バッタやキリギリスの仲間は緑色と茶色が多いのですが、真っ黒いのや赤っぽいものもいます。赤っぽいもののうち極端なものは人間の目から見ると鮮やかなピンク色で、ちょっとびっくりしますね。
数は少ないので(体感的には100匹に1匹とか、もっと少ないです)珍しいものですが、とくに増えているわけではないと思います。
色の混ぜ具合(色素のバランス)でそうなるんだと思いますが、その意味はよくわかりません。
ピンク色になったら、いいことがあるのかな?
いいことあるなら、もっとピンクのバッタが増えてもいいのに、そうならないのは、いいことがないからかも? ひょっとしてかわいそうな子かも。
緑色のバッタは緑の草のところにいることが多いですが、ピンクのバッタはどこに行くのがいいのかな?
みんなで考えてみるのが楽しいと思います。
ピンクのバッタはトノサマバッタの幼虫です。
育ててみては?
マダラバッタでは、成虫でもピンク色のものがよくいるのですが、トノサマバッタは幼虫のときだけのことが多いです。どうなるかもお楽しみください。
あまりヒントになりませんが、よろしくお願いいたします。
2023年9月1日 赤穂西幼稚園→ひとはく
むしはかせからのメッセージを子どもたちへ伝えました。みんなで感じること、考えること、やっぱり素敵な時間だなあ〜
八木 剛 先生
早速お返事をいただき、ありがとうございます。
今日から2学期がスタートし、通常保育も開始しました。
みんなにピンクのバッタを見せることを楽しみにしていたはなちゃん(ピンクのバッタゲッター)です。
あわせて、八木先生から教えていただいたこともみんなに話しました。
メールの内容を平仮名表記にして、お部屋にも掲示しました。(ネットからお借りした、先生のお写真も添えて・・・)
また、「緑のバッタは草のところに隠れられるけれど、ピンクのバッタはすぐに見つかってしまいそう、
どうしたいいのかなぁ?」と子ども達に投げかけてみました。
無言で、バッタを見つめる子、
「ピンクのお花の中」「それやったら桜ちゃう?」「イチゴ畑がいいわ」
等々、自分のもつ知識や経験を活かして話す子もいました。
みんなで、感じること、考えること、やっぱり素敵な時間だなぁ~・・・
と改めて思いました。
ピンクのバッタちゃんは、飼育ケースの中でとても元気そうです。
これから、どうするか、先生に教えていただいたことも話題にしながら
またみんなで話し合おうと思います。
貴重なご意見をいただきまして、本当にありがとうございました。
今後もし、虫のことで、なにか聞いてみたいことがれば、またメールをさせていただいてもよろしいでしょうか?
普段から幼児の主体性を育むことができるよう、保育に取り組んでいますが、
「なにか知りたいことや、尋ねたいことがあって自分たちだけで解決できそうにないとき、
聞いてみる、とか、動いてみる、とか、実際になにかアクションを起こしてみることで、それが実現したり
叶ったりすることにつながる」という感動、嬉しさ、充実感・・・を、私たち職員も感じることができました。
ありがとうございました。
赤穗西幼稚園 宮島由香
2023年9月3日 ひとはく→赤穂西幼稚園
いろんな想像をして、物語ができると楽しいですね。科学的説明なんておもしろくない。
赤穂西幼稚園 宮島先生
八木@ひとはくです。
ご活用くださり、ありがとうございます。
いろんな想像をして、物語ができると楽しいですね。
そういうプロセスが幼児期には大切だと思いますし、虫がそのための素材となればいいですね。
「科学的」には、バッタの体色が隠蔽色(保護色)だとすると、天敵からどのように見えているのかが重要になります。可視光(見えている色)は動物によって違いがあり(昆虫や鳥は紫外線が見えます)、人間が見える色だけで虫の色を考察してもじつはあまり意味がありません。なんていうと、ぜんぜんおもしろくないですから。
バッタについては、こちらの記事もご参照ください。
マダラバッタのところにピンク色の紹介もしています。
https://eco-loco.jp/post3573/
むしの質問は、いつでもどうぞ。
問い合わせフォームもありますので、お気軽に。
https://eco-loco.jp/page-5576/
よろしくお願いいたします。
2023年10月4日 赤穂西幼稚園→ひとはく
ピンクのバッタのその後。変身も! たくさんの初めてを目の当たりにし、みんなで共有することができました。
八木 剛先生
ピンク色のバッタのその後・・・です。
みんなで話し合って、お世話をすることになりました。
1週間くらいたった頃だったと思います。
ある朝、突然一回り大きくなって、色が茶色になっていました!!!
はじめ、誰かが違うバッタを入れたのかな?と思いました。
それくらい、見事な「変身」ぶりでした。
みんなで「え~~~~っ?」とびっくりして、そういえば、八木先生のメールに
「ピンクなのは子どもの時だけ」ってかいてあったもんね~、と納得(したのは大人だけだったかも・・・)
それでも「ピンクだったけど、茶色に変身したバッタ」は、全園児10人みんなで見て、驚き、
誰かに話したくなる経験となりました。
そしてつい先日卵を産みました。
飼育ケースの底面と、草を挿している小さなペットボトルのところに、です。
「あなた、雌だったのね!」という思いと、ちゃんと土の中に産ませてあげられなかったこと、
雄と出会う機会がなかったこと、等になんだか切なくなりました。
子ども達ともう一度話し合って、バッタとこの後どう向き合うか、考えたいです。
ピンクのバッタの発見から、脱皮をすること、色が変わること、卵の様子、うんちの量、、、
などなど、たくさんの「初めて」を目の当たりにし、みんなで共有することができました。
赤穗西幼稚園 宮島由香
2023年10月4日 ひとはく→赤穂西幼稚園
このプロセスを、エコロコのサイトに、ぜひ!
宮島先生
ありがとうございます。
バッタの変身、すてきですね。
ちゃんと大人になったのはすばらしいです。
「だれかに話したくなる」というのは、まさに非認知的能力開眼ですね。
もし、何かにまとめたものがありましたら、ご提供ください。
エコロコのサイトに掲載したいです!
2023年10月19日 赤穂西幼稚園→ひとはく
まさに非認知能力の開眼。子どもたちの「あるがままの姿」をたいせつに。
八木先生
先日はメールをいただきまして、ありがとうございました。
お返事が遅くなり、大変失礼いたしました。
自園の研究会にむけて、バタバタしておりましたが、昨日無事終了いたしました。
園の先生が、ピンクのバッタと出会ってからのドキュメンテーションを作成し、子ども達と共有していたものがあったので、写真に撮って送信させていただきます。
何度か送信しようと試みたのですが、うまくいかず、写真が2枚なので、2回に分けて送らせていただきます。
「非認知能力」の開眼、まさにその通りだと思いました。
園に来てくれた人に「このバッタね、最初はピンクだったんだけど・・・」
と生き生きと話す子どもの姿がとても印象的でした。
今年は、虫が大好きな子がいて、その子の影響でいろいろな生き物や「姿」と出会う機会がありました。
でも生き物は、ずっと前から「普通に」「あるがままに」生息していたはずです。
私たち保育者は、それに気付かなかったり見ていなかったりした(見ようとしていなかった)のだと思うのです。
だけど、虫が大好きな子ども達と一緒にいろんな生き物と出会い、「不思議!なんで?」「誰かに聞いてほしい!」「もっと知りたい!」と夢中になる中で、子どもと保育者の「自然や生き物を見る目」が変容していき、たくさんの「出会い」につながったのではないかと感じます。
そしてそれは八木先生がおっしゃっていた子ども達の「非認知能力」についても同じことが言えるのではないかと思いました。
保育者として、「非認知能力、育んでいくぞ~!」という外部からのアプローチ的な意気込みも大切かもしれませんが、その力は「あるがままに」主体性を発揮する子ども達のなかにちゃんとあって、それに私たちが気付かなかったり、「見る目」がたりなかったために、十分見取れていない部分があるのでは?と思ったのです。
様々な生き物との出会いの中で「非認知能力」を発揮している子ども達に、まず私たち保育者がちゃんと気付いていくこと。「子どもと向き合い、見つめる目や心」=「見る目」を、丁寧に磨き続けていくことで、一人一人の中に育っている「非認知能力」にもっともっと多様に出会えるのではないかと、私たち職員は今、ワクワクしています。
赤穂西幼稚園 宮島 由香
ドキュメンテーョン
以上のプロセスについて、園の先生がドキュメンテーションを作成し、子どもたちと共有しました。
楽しいですね。
みなさんも、ひとはくを、エコロコを、どうぞご活用ください!